Shell Blog~環境衛生のエキスパートたちが書く、モノやコト~
2015.01.08
熱中症になったときは、水分の他、少量の塩分も必要となります。
しかし、(濃い)塩水を飲んではいけないのはなぜでしょうか。
感覚的にはご存じとは思いますが、今回は実際に続けた場合
どのようになるかをお話しいたします。
血液中には1%弱の塩分が含まれており、
腎臓の働きにより余分な塩分を排泄して、
絶えずこの濃度に維持されています。
一方、例えば海水には約3%の塩分が含まれています。
そのため海水を飲むと、濃い塩分が体内に吸収され
血液中の塩分濃度が上昇します。
塩分濃度を1%弱に薄めるためには水分が必要となります。
私たちの体はそのことを脳で察知し、口や喉の渇きが刺激され、
さらに水を飲みたくなるのです。
もし血液中の塩分濃度を薄めるだけの
水分が補給されない状況が続くと、水分は体内に吸収され、
尿は次第に出なくなってしまします。
尿が出なくなれば塩分や老廃物、有毒物質が溜まり、
尿毒症に陥り生命が危険になります。
また血液の細胞機能が阻害され、酸素輸送なども果たせなくなり、
最終的には死に至ります。
では海水魚は、淡水魚や陸上生物より、
ずっと血液中の塩分濃度が高い体質なのでしょうか。
実は塩分濃度はどちらもほとんど変わりません。
海水魚はまず口に含んだ海水を、えらで塩分濃度を薄めてから飲みます。
さらに腎臓で塩分を抽出し、塩分濃度の濃い尿として排出しています。
淡水魚が海水魚とほぼ真逆の
水分・塩分の摂取・排出構造になっていることを考えると、
生物の進化や適応能力に改めて驚かされます。
※参考:
・たばこ塩産業新聞「塩なんでもQ&A」 2000年2月25日発行分記事
「渇きに苦しむときなぜ海水を飲んではいけないのか」
(財)ソルト・サイエンス研究財団専務理事(当時) 橋本壽夫氏著
・サントリーウェブサイト 水大辞典より「魚と水」
当社HPはこちらから→ www.shell-syoji.co.jp
一覧へ戻る